街を空想する

幼少の頃から変わらぬ趣味は

野鳥観察のような四字熟語に収まるものばかりではない。

他所様に説明しにくく、明かしてこなかったものもある。

その一つが「街の空想」。

簡単に言おうとすれば、

有りもしない都市の地図や光景を思い描き、

できあがった空想都市の中で遊ぶのである。

子どもの頃はチラシの裏や画用紙に地図を描き、

鉄道やバスを走らせ商店街を連ねて楽しんだ。

 

今は実際に描くことは滅多にない。

 

色々と現実を知ってしまい、

やれこの川の形状は自然の摂理に矛盾する、

この繁華街は人口規模に比して大きすぎる、

人口の割に小中学校が足りない…etc

と突っ込みを入れ始めると興ざめだからだ。

 

ある程度成長してからは

A列車で行こう」や「シムシティ」などの

「街ゲー」にもどっぷりはまったが、

ゲームにはどうしても制約がある。

その点、自分勝手に考えている分には

誰も止める人はいない。

 

空想のベースは基本的に日本に実在する都市で、

だいたい県庁所在地など地域の中心都市が多い。

時々農山漁村の空想も試みるが、

都市育ちのためリアリティーに欠けてしまう。

鉄道好きだったこともあって、

空想は概ねターミナル駅から始まり、

目抜き通りから繁華街、官庁街と来て

郊外へと想像を広げていく。

 

こんな趣味をいい歳して引きずっているのは

私くらいなものかと最近まで思っていたが、

意外と他にもいらっしゃるらしく、

実際の都市地図そっくりの描画を行っている方まで

居られるということが分かった時には

とても心強く感じ、勇気をもらった。

 私の如き趣味を究めた一つの集大成と言えるのが

以下にご紹介する一冊。地図自体のリアリティーも

さることながら、都市の観察眼や分析には共感、

感服する部分が多々あった。弟子入りしたいほどに。

みんなの空想地図

みんなの空想地図

 

恥ずかしながら、私の脳内には今も空想している街がある。

人口規模は福井市甲府市ほどの20万台で、

新潟市のように大河が中心を貫き、

目抜き通りの先には徳島市眉山のような山がそびえる。 

街路樹や公園が連坦して里山へと続く

緑豊かな景観を誇りとしている街。

自然地形の設定には無茶な部分が多々あり、

今後修正を繰り返しながら完成させていくことになる。

もう少し完成度が高まれば郊外の住宅地に「市民」を

住まわせて、通勤通学や買い物などの日常を空想して

楽しみを深めようと思っている。

この間までは熊本市くらいの規模感の城下町を

空想の舞台として、都市圏の主要部をどうにか

脳内に描き切ったところで旅を終えた。

後半に空想世界で起きた交通渋滞の悪化や大学の郊外移転、

高速道路の新設による工業団地の乱造は

目に余るものがあったが…。

 

この趣味の問題を挙げるならば、空想世界に出かけた自分を

現実に呼び戻すのに少々時間がかかるということだろうか。