他に趣味は無いんですか?

「つまらない奴だ」

目の前の男が顔全体でそう言っている。

「他に趣味は無いんですか?」

そう聞かれましても、どうなんでしょう。

以前にも一度書いた通り、

趣味を尋ねられると毎度困惑する。

「野鳥観察」とか言ってみたりするが

イマイチ共感や納得に至らない。

アホみたいに「鉄道旅行」とか言うと、

まぁ引かれること。

そして、正直そこまで好きでもない。

「ランニング」

まぁ好きでやってはいるが

冬季は室内だし実際そこまで走らない。

…。

趣味を尋ねる意図とは何か。

単なる話題作りではない。

そこからシビアに人間性を見極められる。

できれば「フットサル」とか答えたい。

仲間との協調、新しい物への関心、健康的…

そこから読み取れる豊かなパーソナリティー。

スポーツは大概そうだが、

基本は「誰かと一緒に行う」ことが

趣味として推奨されるのだと思う。

仮に一人で行うものならば、

他の追随を許さぬほど深い造詣を求められる。

「読書」なら太宰や清張、ヘミングウェイ

ドストエフスキー辺りは読破していなければ

認めてもらえそうにないし、

でなければSFなど尖った専門分野が欲しい。

「映画鑑賞」も似たようなことが言えそう。

「絵を描くこと」で求められる画力とは

どれほどのものだろうか。

「楽器演奏」

おっ、これならソロプレイでも

突っ込まれなさそうだ。

勿論相応の実力と実績が求められる。

…と、そんなことばかり考えているので

のめり込める余暇活動に出会えない。

そもそも、何かを純粋に楽しむという経験が

あまりにも不足している。

球技は楽しい。

ただし「誰の足も引っ張らなければ」。

楽器は初期投資が高いので、

上達しなければペイできないという

プレッシャーにやられる。

そうした雑念にまみれているので、

ちっとも楽しめない。

「誰かの迷惑になっていないか」

「皆に認めてもらえるか」

そんなことばかり考えているから

のめり込むことができない。

何かにのめり込んだ時の

「没入感」を味わいたい。

できれば履歴書に書ける趣味で。